―――世界が終わるんだって。誰かがそう言った。ウソかホントかは知らないが、本当に世界は滅びに向かい始めた。
だから旅に出る事にした。静かに終われる場所を求めて。



「ねえ、消えたらどうなると思う？」
自転車を押す少女は、男にそう聞いた。
「・・・なあ、その質問何回目だ？」
「うーん・・・五十・・・いや、六十回目くらいだったかな？」
少女の問いに男はうんざりしたように聞くと、少女は意識してか無意識か、顎に指を当てて『考えてる』のポーズでそう答えた。
「それだけやっても、答えは出ないんだ。不毛なだけだからやめてくれ」
「えー？だって気にならない？死ぬのか、見えなくなるだけなのか、はたまた別の所に行くのか・・・」
少女は片手で自分の自転車を押しながら、もう片手で指折り数えて可能性を考える。
男も自分の自転車を押し、それを溜め息を吐きながら眺める。
「実際に消えなきゃ分かんねえだろ。いくら考えたって無駄だ」
「そっかー・・・」
重たい荷物を抱えた自転車を押して坂を昇る二人は、話題がないためかある種お決まりとなっているような会話で場を濁す。
「で？」
「あ？」
「正解。何回目か聞いたんだから、正解教えて？」
「そんなもん、いちいち数えてるわけないだろ」
終わりの見えない緩やかな坂に、微妙にうんざりし始めていた男は、反射的にそう返す。
すると少女は、いたずらっぽくニヤッと笑った。
「ねえおじさん？その返し、何回目？」
「・・・不毛なだけだからやめよう」
男は溜め息を一つ吐いて、話をきり上げる。
静かな舗装された道路の上を、中年男と女子高生の二人が、自転車に荷物を積んで歩いていくのだった。
坂を登り切ると、閑散とした街並みが広がっていた。
「ゴーストタウンかな？」